積分記号は「s」を伸ばしたものじゃないってば

しくみがわかるベイズ統計と機械学習

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  • 作者:手塚 太郎
  • 発売日: 2019/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
にも書いてあるが間違い。

積分記号はドイツの数学者のゴットフリート・ライプニッツによって17世紀末に発表された。長いs(ſ)を変形させた記号である。
ja.wikipedia.org

高等学校における微積分教育の研究[VII]
https://opac1.lib.ehime-u.ac.jp/iyokan/AN00024764_1993_40_1-85._?key=DGBWLY
に、引用であるが、

この積分記号∫については,s を長く引き伸ばしたものであるとは,多くの書物の記するところであるが,筆者は,そのような記述は誤りであると思うのである。因に,藤原松三郎は「∫は一七八世紀の頃に用いられた s の形で,和を意味する summa の首文字である」といい,また,中村幸四郎は次のように述べている。

記号∫は s を長くのばして記号としたものであるとは,よく数学史の本に書いてありますが,これは17世紀のフランス語やラテン語を知らぬことに基づく誤りであります。

和は当時はſummaと書いたのです。長いエスを使う書き方は,ゴチック文字でドイツ語を書いた,つい二三十年前までドイツ語の中には残っていたことです。17世紀の印刷をみれば,このſは文中いたるところに見られます。

となる.長いs「ſ」は語頭、語中に用いられ、語末は「s」が用いられた。現代ギリシャ語でも「Σ」は語頭、語中の「σ」と語末の「ς」がある。

ja.wikipedia.org


2020.09.30追記
藤原松三郎の文章は、
微分積分学. 第1 - 国立国会図書館デジタルコレクション
の p.293(コマ番号157)にある.この本は改定新版が出ているが、そちらの内容は未確認。

原文は
「∫ ハ十七八世紀ノ頃ニ用ヒラレタ s ノ形デ,和ヲ意味スル summa ノ首文字デアル」
となっている.カタカナは読みにくいので(活字だとカタカナは漢字に比べて小さいので区別が簡単)ひらがなに直すと
「∫ は十七八世紀の頃に用ひられた s の形で,和を意味する summa ノ首文字である」
となる。

2020.10.10追記
bookclub.kodansha.co.jp
の内容紹介でも

たとえば、積分記号の∫。不思議なかたちをしていますが、これは“S”を上下をぐっと引っ張ったものです。積分の本質は面積の計算であり、そのためsum(和)の頭文字Sが用いられました。

とかいいかげんなことを書いている。数学しぐさ。