山本哲朗, 行列解析の基礎, サイエンス社, (2010)

別冊数理科学 行列解析の基礎 2010年 12月号 [雑誌]

別冊数理科学 行列解析の基礎 2010年 12月号 [雑誌]

定理、証明の繰り返しが基本なので、線型代数を一通り勉強した人が勉強した内容をざぁーっと確認するために適した本。

後半は既存の線型代数ではあまり触れられていない制御系などで用いられる行列の性質について触れられているので、結構楽しめる。行列の方程式 AX+XB=C が解をもつ条件をクロネッカ積を使って示す話は、大学のときに、現在は共同研究者でもある人のレポート課題だった。この話は和書だと

システム制御のためのマトリクス理論

システム制御のためのマトリクス理論

http://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339083309/

ぐらいにしか記載されていないマイナーな話だったが、これでメジャーになるか。ちなみにこのシステム制御のためのマトリクス理論はいい本だ。キシリア様に…。もちろん、この本も参考文献に入っている。

このシリーズはページ数の制限もあるので、濃い内容は期待できないのは致仕方がないのだが、確率行列についての記述が少ないのが残念だ。但し Birkhoff の定理の証明は、残念ながら純代数的証明しか知らんかったの勉強になった。

確率行列の固有値の分布に関するカーペレビッチの定理が日本の線型代数の本で紹介されるのはいつの日になるのだろうか。