標準偏差はデータのちらばり具合を表し、標準偏差が大きいほどちらばり具合は大きい

という言葉は正しくもあり、正しくもない。

標準偏差(または分散)はデータのちらばりぐらいを表す指標の1つに過ぎないのだから、別の指標、例えば、中央絶対偏差(median absolute deviation; MAD)からするとちらばり具合の大きさは逆転することがある。このようなことをきちんと説明しないので、標準偏差がちらばり具合を表す「絶対的な指標」と勘違いする。これはとても危険であり、高校数学に統計を含めることが良くない理由の1つである(高校に限らず大学で統計を教えている先生でも MAD を知らない人は結構いる)。

大雑把に言って、二乗基準に基づく(正規分布に基づく)統計学を高校数学で学ばされるが、最小絶対偏差基準(人によっては、最小絶対値基準)(ラプラス分布に基づく)統計学もあるということだ。もちろん他にもいくつかの統計学があり、それらの多くはロバスト統計学で知ることができる。

なお、ロバストではないが、Mini-Max 基準(チェビシェフ基準)に基づく統計学も、最大リスクの最小化という意味で重要である。

ちなみに、正規分布に対しては \sigma\approx 1.4826\mbox{MAD} となることが知られている。