根津千治,解析幾何学講話,高岡本店,大正10年

手元にあるのは昭和7年2月20日第11版。序言には「本書の原版は震災で無くなった為め新たに作り直すこととなった。そこで多少とも気が附いた所の訂正増補を施した。大正十三年 秋」とある。

緒言

解析幾何学(Analytical geometry, Analytische Geometrie)とは何如なる学科なるかといふことは之れを学ばない以前には簡単に述べ悪い。ざつと言はば幾何学代数学を応用したものだといへる。
「直線」は「二元一次方程式ax+by+c=0」で表はされるとか、「円」の方程式が何如なる形をとるとか、「二元二次方程式ax^2+hxy+by^2+fx+gy+c=0」は何如なる「曲線」を表はすかといふこと等を研究する。
本来ならば三次方程式等をも研究するものであるが、普通は二次止まりで即ち二次方程式によりて表はさるる諸曲線(之れを二次曲線 Curves of the second degree, Kurven zweiter Ordnung といふ)が主要なる研究題目である。此二次曲線は円錐を種々の傾きに截るとき截断面の周として顕はるる全部であることから、之れを又円錐曲線(Curves of conic sections, Kurven der kegleschnitte)ともいふ。
それで普通の解析幾何学は乃ち円錐曲線論であることから、此学科又は二次曲線のことを略して Conic sections とも更に略して Conics ともいふのである。
さて何如にして幾何と代数との聯絡を附けるか。それには座標(Co-ordinates, Koordinaten)といふものが必要であること、恰かも三角法では三角函数というものが必要であると大差がないと思って居て貰ひたい。
先ず研究の順序は直線上の点と平面上の点とから始まる。次に直線、次に円、次に楕円等の諸性質を述べる。併し本書は純数学の立場からではなく、物理学を始め他の諸学科に応用の多い極めて基本的なる卑近の部分を講ずるのである。

(カタカナはひらがなに、漢字も一部を除いて現在の表記に変更)だそうだ。内容は、直線、円(極と曲線)、二次曲線とその標準化という所だから内容は一昔前の高校生の範囲である。

「平面上に於ける点の位置の言ひ表はし方の第二としての極座標式といふものを述べやう。」ってR・田中一郎か??(これが言いたかっただけ)