アポロニウスの最大最小問題

アポロニウスの最大最小問題とは

「2次曲線上にない点から2次曲線への最短距離を与える2次曲線上の点はどこか?」

という問題であり、

の pp.4-7 に記載されている。この本は面白くて、あっという間に読み終えるので、おすすめ。私がめずらしく褒めている。

昔、楕円あてはめとか流行った(?)けど、2次元平面(x,y) を5次元空間(x^2,xy,y^2,x,y) に射影して線形あてはめを利用して楕円を最小二乗基準であてはめるのが普通で、この手法は特徴空間での最小二乗基準であって、もとの2次元での最小二乗基準になっていないことは知られており、それを重み付き最小二乗基準で近似する手法が色々と提案された。

しかし、どのように重みを工夫しようとも、特徴空間において線形あてはめで推定しようと考えた場合、垂線の足が一意に決まる、つまり楕円への最短距離を与える2次曲線上の点が1つであることを暗黙に仮定した手法となってしまっている。というのは、楕円に対応する4次元超平面に対してデータ点から垂線の足を下した点の座標(x^2,xy,y^2,x,y) から(x,y) を求めることによって2次元平面上での最短距離を与える点を求めることになるからだ。

しかし、この手法は本質的に問題点を孕んでいて、結局は2次曲線は曲線なのだから、5次元空間に射影したところで、5次元空間の曲線である。だから、推定された4次元平面に垂線の足を下したところで、その垂線の足に対応する楕円上の点は存在しないことの方が多い。5次元空間の点を2次元の点に対応させるための別の手法が必要となる。もちろん、この問題の対策として、5次元空間の計量を写像のヤコビ行列を使って場所毎に換えることによって、「なるべく5次元に埋め込まれている曲線の方向に垂線を下すようにする」という形で局所的な計量を考慮した重み付き最小二乗法の提案によって近似の精度を高める研究もあったのだが。

また、アポロニウスの最大最小問題の楕円の場合から、楕円の縮閉線の内部の点と楕円上との点との距離が極小となる点が4箇所あり、そのうちの最小となる点が複数ある場合がある(軸上の点、中心は4箇所とも同じ値)ことがわかるので、そもそも最短距離を与える点が1つしか推定されない手法は厳密な最小二乗基準とはなりえず、あくまでも近似の範囲内であることに注意したい。つまり、線形化する手法では2次元空間を5次元空間に非線形に埋め込んだときの歪みを完全に捉えることはできないということが実は紀元前から考えられていたことになる。まぁ言いすぎだが。

まぁ、実用上は、そこまで精度が要求されることはないように思うけど、数学的な問題点は知っておきたい。