双曲線の準円 revisited

楕円と双曲線の準円 - 球面倶楽部 零八式 mark II

の続き的な何か。

まず,真面目に双曲線に引ける接線の本数を代数的に求める.
(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=r
の形の直線が(r,\theta)\mapsto(-r,\theta+\pi) で同じ直線を表すため,パラメータの組の数と直線が1対1に対応するかどうかをきちんと考えなければならない.今回は原点を通る双曲線の接線は存在しないので(無限遠点で接するという話は考えない),

ここで原点を通らない直線を
(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=rr\neq 0
の形で表したとき,Hesse の標準形では
r\gt 00\leqq \theta\lt 2\pi
とすることにより直線とパラメータを一対一に対応させている.この対応は
r\neq 00\leqq \theta\lt \pi
としても直線とパラメータを一対一に対応する.なお,
r\neq 00\leqq \theta\lt 2\pi
とすると直線とパラメータは1対2に対応する.

ということに注意しておく.そして今回考える,原点対称な双曲線においては,
r\neq 00\leqq \theta\lt \pi
によって直線とパラメータを一対一に対応させることにする.このとき双曲線には平行な接線の組が存在して
(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=\pm r
の形となっており,この2直線は r\neq 0 より一致しないので,
\{(\cos\theta) x+(\sin\theta) y\}^2=r^2r\neq 00\leqq \theta\lt \pi
(「平行2直線」という2次曲線)
の個数と,ある点を通る接線の個数が一致することを利用する.

漸近線を考えると,原点から双曲線に接線を引くことができないので
双曲線 \displaystyle\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1a,b\gt 0)の接線は
\displaystyle(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=rr\neq 00\leqq \theta\lt \pi
とおくことができる.

この直線の式を,双曲線の接点を利用した接線の式に対応させると
\displaystyle\dfrac{a^2\cos\theta}{r}\cdot\dfrac{x}{a^2}-\dfrac{-b^2\sin\theta}{r}\cdot\dfrac{y}{b^2}=1
となるので,双曲線の接線の公式から接点は\left(\dfrac{a^2\cos\theta}{r},-\dfrac{b^2\sin\theta}{r}\right)となり,接点が双曲線上にあることから \displaystyle a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta=r^2\neq 0)が成立する。

つまり,双曲線の接線の式は 0\leqq \theta\lt \pi なる \theta に対して
\displaystyle(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=\pm\sqrt{a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta}\neq 0
となり,接線の法線ベクトルを決めると,互いに平行な接線が2つ定まる.

なお,このような接線が存在するための \theta の条件は
\displaystyle a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta\gt 0,すなわち \displaystyle |\tan\theta|\lt \dfrac{a}{b} を満たすことである.

つまり,題意の双曲線の接線は
\displaystyle(\cos\theta) x+(\sin\theta) y=\pm\sqrt{a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta}
0\leqq \theta\lt \pi\displaystyle |\tan\theta|\lt \dfrac{a}{b})…(♪)
とおけ,この条件を満たす \theta と接線は1対2に対応することに注意しておく.

この互いに平行な2接線を1つの2次曲線
\{(\cos\theta) x+(\sin\theta) y\}^2=a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta\neq 0)…(★)
で表現すると,(x,y) を通る接線と,(x,y) を通る2次曲線(★)は1対1に対応するので,

(x,y) を通る相異なる接線が何本あるかは(★)をみたす \theta0\leqq \theta\lt \pi)の個数を数えれば良い.

正確には,(x,y) を通る相異なる接線が何本あるかは(★)をみたす \theta0\leqq \theta\lt \pi\displaystyle |\tan\theta|\lt \dfrac{a}{b})の個数を数えれば良いことになるが,

\displaystyle |\tan\theta|\gt \dfrac{a}{b} のときは(★)の左辺が正,右辺が負となって(★)は成立しないので気にしなくても良く,気にすべきなのは\displaystyle |\tan\theta|=\dfrac{a}{b} のときである.

ここで(★)が
\{(\cos\theta) x+(\sin\theta) y\}^2=0
となるとき,a^2\cos^2\theta=b^2\sin^2\theta から
bx+\pm ay=0(漸近線)
となることに注意すると,

(x,y) を通る接線または漸近線が何本あるかは
\{(\cos\theta) x+(\sin\theta) y\}^2=a^2\cos^2\theta-b^2\sin^2\theta…(★★)
をみたす \theta0\leqq \theta\lt \pi)の個数に一致する

ことがわかる.よって(★★)をみたす \theta0\leqq \theta\lt \pi)の個数を数え,漸近線上の点の場合は個数から1を引く(2つの漸近線の交点である原点からは2を引く)ことによって接線の本数がわかる.

漸近線は無限遠点における接線だと思うと話は簡単なので,「漸近線または接線の本数」を数えると話は簡単になる.双曲線の準円における除外点は,漸近線と,漸近線に直交する接線をもつと考えれば納得が行くだろう.だから接線の本数を数える代わりに「漸近線または接線の本数」を数えてあとで漸近線かどうかで引き算を行うのがわかり易い.

ここで(★★)を整理すると
(x^2-y^2-a^2-b^2)\cos2\theta+2xy\sin2\theta=a^2-b^2-x^2-y^2…(☆)
となるので,合成公式を思い出すと

(1) (x^2-y^2-a^2-b^2)^2+(2xy)^2\gt (a^2-b^2-x^2-y^2)^2 のとき,
整理して\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}\lt1のとき,

(★★)をみたす 0\leqq \theta\lt \pi は2つある.

(2) (x^2-y^2-a^2-b^2)^2+(2xy)^2=(a^2-b^2-x^2-y^2)^2 のとき,
整理して\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1のとき,

(★★)をみたす 0\leqq \theta\lt \pi は1つある).

(3) (x^2-y^2-a^2-b^2)^2+(2xy)^2\lt (a^2-b^2-x^2-y^2)^2 のとき,
整理して\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}\gt 1のとき,

(★★)をみたす 0\leqq \theta\lt \pi は存在しない.

となるので

(i) \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}\lt1 かつ bx\pm ay\neq 0 のとき,引ける接線の本数は2本

(ii) \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1 または bx\pm ay=0(漸近線)(但し原点を除く)のとき,引ける接線の本数は1本

(iii) \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}\gt 1 または原点のとき,引ける接線の本数は0本

となる.

では準円について片付ける.

(x,y) を通る直交する接線が存在する条件は,(★)が \theta=\alpha,\alpha+\dfrac{\pi}{2} の形,つまり2\theta=2\alpha,2\alpha+\pi という形の解を持ち((★)の右辺が0になるということ),この2つの解がいずれも漸近線に対応しないことであるから,
a^2-b^2-x^2-y^2=0 かつ bx+\pm ay\neq0,つまり

x^2+y^2=a^2-b^2 から双曲線の漸近線bx+\pm ay=0上の点を除いたもの

となる.

なお,b\geqq a のときは空集合となる.

先程も述べたが,除外点において,漸近線を無限遠点における接線と考えれば互いに直交する接線を持っていることになる.