小島寛之著,ゼロから学ぶ線形代数,講談社(2002)

ゼロから学ぶ線形代数 (KS自然科学書ピ-ス)

ゼロから学ぶ線形代数 (KS自然科学書ピ-ス)

この本は、後に別の線型代数の本を読むときに何の役にも立たないよね。

と、直接著者に言ったことがある。本人は苦笑していたが。

この本は結局は行列式論の本であり線型代数の本ではない。それは出発点が行列式は符号付体積というのが出発点となっているからである。もちろん固有値固有ベクトルなどにも触れてはいるが、それらは添え物程度である。

符号付体積 → 行列式の多重線形性 → クラメルの公式 → 行列の展開公式 → 行列式の具体的表現

という流れは、以前紹介した

S.Lang(芹沢正三訳),ラング線形代数学,ダイヤモンド社(1971)

ラング線形代数学 (1971年)

ラング線形代数学 (1971年)

の第6章と同じなので、ここで前言を撤回しておく。ラング線型代数学を読むとき、ゼロから学ぶ線形代数は役に立つ。しかしラング線型代数学は非常によく書けているので、ラング線型代数学があれば本書は不要という話もあるが。ただラング線型代数学は絶版だから、ラング線形代数学が図書館等に無い時、ラング線形代数学の雰囲気を味わうには良いかもしれない。

海原雄山に言わせれば、フグの白子と鱈の白子の違いかもしれないが。

目新しいことは、det{A}=det{A^{T}} という転置の公式を証明する際に用いる、ある置換とその逆置換の符号が等しいことを

(1)置換の符号は置換行列の行列式に等しい
(2)逆置換に対応する置換行列は、もとの置換に対応する置換行列の転置となる

事を利用して証明したことかな。

人にとっては読みやすいのだろうが、ブログ筆者にとっては読みにくい本であった。まず、フォントが苦手。こればっかりはどうしようもない。TeXのフォントに慣れすぎたかなぁ。次に著者の文体が苦手。感動を強要する大げさな文章は却って興ざめになってしまう。内容に集中できなくなってしまうのだ。

あとは、著者がポイントその4 ミステリー仕立ての会話で、疲れた頭にくつろぎのひとときを。で述べている「最後のエピソードを読み終わった読者諸氏が、なるほどとばかり爽やかな読後感を持って下さったら本望である」についてだが、ブログ筆者はオチを読んで頭を抱えてしまった。あいたたた、、、、。

ちなみに、著者を知っているので、こう書いているだけであって、あまり本気にしないように。