Cayley-Hamilton の定理

正方行列 A の固有多項式\Phi(x) とおく。行列 xI-AI単位行列)の余因子行列を \rm adj(xI-A) とすると

(xI-A)\cdot \rm adj(xI-A)=\rm det(xI-A)\cdot I=\Phi(x)\cdot I=\Phi(xI)

が成立する。ここで\Phi(xI)は固有多項式スカラー x を行列 xI に置き換えた行列の多項式であることに注意する。

行列の等式(xI-A)\cdot \rm adj(xI-A)=\Phi(xI)において、行列  xI を行列  A に置き換えると、
O=(A-A)\cdot \rm adj(A-A)=\Phi(A)\cdot I
となり、\Phi(A)=O が成立する。

注1) x^k I =(xI)^k(k=0,1,2,\ldots) により、f(x)If(xI) と、行列 xI多項式に書き換えている。ここでxが任意のため、行列の等式において、x恒等式となるので、x^k の係数行列、つまり、(xI)^k(k=0,1,2,\ldots)の係数行列も両辺で等しくなる。よってうまくxIA に置き換えても行列の等式が成立する。

注2) \rm adj(xI-A) の行列  xI を行列  A に置き換える、という操作は難しいかも知れないが、 \rm adj(xI-A) は係数が行列となるスカラー x多項式になっており、このスカラー x を行列 xI に置き換えた行列と考えていただければ xIA に置き換える操作がわかり易いだろう。もっとも、それがどのような行列になろうとも、(A-A)を乗ずることで消えてしまうのだが。