部分分数分解

雑誌「大学への数学」の2020年7月号で一松信先生が部分分数分解の簡単な方法について触れていた。

tsujimotter.hatenablog.com

に書いてあるようなやつ。この話自体は高校生のときにやったけど、使っているといえば使っている、使っていないといえば使っていない方法。この方法は分母の多項式が重解をもつときは少し面倒なので
(そういった意味では、一松先生の、2乗の因数が1つだけのときは、他のものを求めて引いてやれば良い、という方法は賢いと思った。さすが。)

分母に2次の因数がないときは

\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(x)}{\prod (x-a_i)}=\sum\dfrac{b_i}{x-a_i}

(分母の最高次の係数を1とし、分子が低次とする)の分母を払ってみれば、単なるラグランジュの補間公式なので、

b_k=\dfrac{f(a_k)}{分母から x-a_k を除いたものに a_k を代入したもの}

であることは良く知られているからだ。なお、

 分母から x-a_k を除いたものに a_k を代入したもの=g'(a_k)

となることから、

b_k=\dfrac{f(a_k)}{g'(a_k)}

も成立する。多項式p(x)x-\alphaで割った商q(x)=\dfrac{p(x)-p(\alpha)}{x-\alpha}について
q(\alpha)=p'(\alpha)である(今p(\alpha)=0)を使う。

この方法は、高校生のときの塾のテキストに書いてあった。どこかの入試問題だと思うが出典は調べていない。
その話がでた問題は、

f(x)は実係数の整式であり
g(x)=\prod (x-a_k)
とする。ただし、a_kはすべて異なる実数でいずれも0でない。

このとき、h(x)はxの整式、A_kは実数として
\dfrac{f(x)}{g(x)}=h(x)+\sum\dfrac{A_k}{x-a_k}
が成立するとき、

(1) A_k=\dfrac{f(a_k)}{g'(a_k)}を示せ

(2) f(x)=x^kのとき、\sum \dfrac{a_k^{n-1}}{g'(a_k)}を求めよ。

であった。(2) で k=3 のときは、良く入試に出ている。

上のブログにもあるけど、部分分数分解は、積分で(特に、複素積分の留数計算でローラン展開をするとき)に良く用いる。

2020.06.21追記
1961年(昭和36年)東京大学数学理科[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
に関連記事

2020.06.28追記
g(x)=\displaystyle \prod_{i=1}^n (x-a_i)とし、 h(x)=\displaystyle \prod_{i\neq k} (x-a_i)=\dfrac{g(x)}{x-a_k}とする。
このとき、h(a_k)=\displaystyle \lim_{x\to a_k}\dfrac{g(x)}{x-a_k}=g'(a_k)が成立することを使っている。
と書いた方がわかり易かったかも。いずれにせよ、微分係数の定義。