備忘録:モーリーの定理のコンウェイによる証明と正弦定理を利用した証明

Conway Circle - 球面倶楽部 零八式 mark II

にConway のモーリーの定理の証明
J.Conway's proof
がすばらしい。是非読んで欲しい。

と書いたが、リンクだけだったので,概略を述べておく。

x^{\ast}=x+\dfrac{\pi}{3}x^{\ast\ast}=x+\dfrac{2\pi}{3} のように \ast の記号を定義しておく.

また,(p,q,r)で内角が p,q,r の三角形を表すものとするが,以下のように辺の長さに条件をつける:

(0^{\ast},0^{\ast},0^{\ast}) で辺の長さが1の正三角形を表す.

a+b+c=\dfrac{\pi}{3} なる非負実数 a,b,c に対して,p,q,r をその順列とするとき,

(p,q^{\ast},r^{\ast})\ast が1つずつ2つの内角にあるものは、\ast のついている2つの内角が両端の角となる辺の長さが1の三角形とする.

(p,q,r^{\ast\ast})\ast が1つの内角に2つついている場合は
(p,q^{\ast},r^{\ast})(p^{\ast},q,r^{\ast}) の2つの三角形を前者の内角が q^{\ast} である頂点と後者の内角が p^{\ast} である頂点が一致するように重ねてできる三角形とする.

このとき,
(a,b,c^{\ast\ast})(a^{\ast},b,c^{\ast})(a,b^{\ast},c^{\ast}) を重ねてできた三角形なので,(a,b,c^{\ast\ast}) の辺 b-c^{\ast\ast} の長さは (b,c^{\ast},a^{\ast})b-a^{\ast} の長さと等しく,よって
(a,b,c^{\ast\ast})(b,c^{\ast},a^{\ast}) はこの長さが等しい辺だけを共有するようにつなげることができる.

さらに,(b,c^{\ast},a^{\ast}) の辺 b-c^{\ast}(b,c,a^{\ast\ast})b-a^{\ast\ast} がぴったりくっつくようにつなげ,
(b,c,a^{\ast\ast})c-a^{\ast\ast}(c,a^{\ast},b^{\ast}) の辺 c-b^{\ast} がぴったりくっつくようにつなげ,
(c,a^{\ast},b^{\ast}) の辺 c-a^{\ast}(c,a,b^{\ast\ast})c-b^{\ast\ast} がぴったりくっつくようにつなげ,
(c,a,b^{\ast\ast})a-b^{\ast\ast}(a,b^{\ast},c^{\ast}) の辺 a-c^{\ast} がぴったりくっつくようにつなげたとき,

(a,b^{\ast},c^{\ast}) の辺 a-b^{\ast}(a,b,c^{\ast\ast})a-c^{\ast\ast} がぴったりくっついていることになる.このとき,この6つの三角形をつなげてできた図形のまんなかに、(0^{\ast},0^{\ast},0^{\ast}) ができていることがわかり,よってモーリーの定理が成立する.

となる訳だ.数学の教材とするには,
(a,b^{\ast},c^{\ast})(b,c^{\ast},a^{\ast})(c,a^{\ast},b^{\ast}) の三角形を3枚ずつ用意して,それらを重ねさせてみるのが良いだろう.

なお,モーリーの定理は三角形の外接円の半径を1となるように選んでおくと,中にできる正三角形の1辺の長さは
8\sin a\sin b\sin c となることが知られている.

\triangle {\rm ABC} において正弦定理より
{\rm AB}=2\sin 3c{\rm BC}=2\sin 3a{\rm CA}=2\sin 3b
である.

\triangle {\rm BPC} において正弦定理より
{\rm BP}={\rm BC}\times\dfrac{\sin c}{\sin(b+c)}={\rm BC}\times\dfrac{2\sin 3a\sin c}{\sin(\dfrac{\pi}{3}-a)}
であるが,\sin^2\alpha-\sin^2\beta=\sin(\alpha+\beta)\sin(\alpha-\beta)という謎公式を用いると
\sin 3a=3\sin a-4\sin^3 a
=4\sin a(\sin^2\dfrac{\pi}{3}-\sin^2 a)
=4\sin a\sin(\dfrac{\pi}{3}+a)\sin(\dfrac{\pi}{3}-a)
が成立するので,
{\rm BP}=8\sin a\sin c\sin(\dfrac{\pi}{3}+a)
となる.同様に
{\rm BR}=8\sin a\sin c\sin(\dfrac{\pi}{3}+c)
となる.ここで
(\dfrac{\pi}{3}+a)+(\dfrac{\pi}{3}+c)+b=\pi
であることに注意すると,\triangle{\rm BPR} の内角は
\dfrac{\pi}{3}+a,\dfrac{\pi}{3}+c,b
となり,正弦定理から3辺の比は
\sin(\dfrac{\pi}{3}+a),\sin(\dfrac{\pi}{3}+c),\sin b
となるので
{\rm PR}=8\sin a\sin b\sin c
となる.同様に(a,b,cをサイクリックにしても不変なので)
{\rm RQ}={\rm QP}=8\sin a\sin b\sin c
となり,\triangle\rm PQR は正三角形である.

この正弦定理のポイントは \triangle{\rm BPR} の内角は
\dfrac{\pi}{3}+a,\dfrac{\pi}{3}+c,b
となることであり,Conway の証明の肝である三角形(b,c^{\ast},a^{\ast})がうまく貼り付けられることを計算で示している所にある.