ある点で微分可能な関数はその点の付近でほぼ直線とみなせるのか?

(基本的に批判的な記事は時間を置いて批判の部分を書き直します)

直線とみなせる、という意味を素直に「直線とは幅をもたない」と考えて無限の解像度で一致するかどうかを考えてしまうと、どんなに拡大してもずれが残ってしまうので「直線とはみなせない」と考えてしまうだろう。

\varepsilon\delta 論法による極限の考え方では、「近似」とは、「ある解像度では見分けがつかない」ということであり、「極限値をもつ」とは、「任意の解像度で見分けがつかなくできる」ということだから,「ある点で微分可能な関数はその点の付近でほぼ直線とみなせる」とは、x=a における微分係数の定義が
\left|\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h} - A\right|\to 0h\to 0
なのだから、\forall\varepsilon\gt0,\exists\delta\gt0 s.t.
|h|\lt \delta \Rightarrow \left|\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h} - A\right|\lt \varepsilon
なる A が存在する,つまり l(x)=f(a)+A(x-a) とおくと
|x-a|\lt \delta \Rightarrow \left|f(x)-l(x)\right|\lt \varepsilon\delta
が成立するということになる.

これは、縦横比 \varepsilon : 1 である 横幅2\delta,縦幅2\varepsilon\delta の細長い(傾きがaとなる)平行四辺形で覆えるということだから、\epsilon\delta的に解釈すると、

任意の\varepsilon\gt 0に対して、ある\delta\gt0が存在して、y=f(x)
縦横比 \varepsilon : 1 である 横幅2\delta,縦幅2\varepsilon\delta の細長い(傾きがaとなる)平行四辺形
a-\delta\lt x\lt a+\delta,f(a)+A(x-a)-\varepsilon\lt y\lt f(a)+A(x-a)+\varepsilon
で覆い隠せることができる

となる.

\varepsilon\delta 論法に基づく極限の本質は、近づくということは任意の解像度に対して見分けがつかなくなる拡大率が存在するという、箱の中に関数を閉じ込めるところにあり、微分係数で用いる極限においても、同じように箱に閉じ込めるところにある。ただ微分係数の場合は箱が小さくなっていくというだけでなく縦横比 h に依存して平行四辺形の箱がどんどん横長で細くなっていくというところにある。つまり細長い平行四辺形という直線に遠目からは見えてしまうということになる(適切な解像度のデジカメで撮影する(適切なフィルタで max pooling すると)と直線になる)。

結構、この解像度に関する感覚が身についていない人が大人でも多い。区分求積法や離散分布の連続分布による近似(ドモアブルラプラスの定理とかも)、その感覚が身についていないと、難しいと感じてしまうのだろう。

昔の人よりも、デジカメというもはや誰でもスマホで身につけている道具を例にすることができるのだから、身につけさせてあげればいいのに。

Twitter って同じ議論の円環の理 - 球面倶楽部 零八式 mark II

そういえば、関数の連続性で、ディリクレ関数と一緒に学ぶことが多いにもかかわらず、結構な人が名前を知らない Thomae 関数の名前を記しておく。

Thomae's function - Wikipedia
トマエ関数 - Wikipedia