解析力学もこの季節(qとqドットを独立とみて微分する話)

渡辺悠樹さんの解析力学講義ノート
Watanabe group, The University of Tokyo - 講義情報
面白そう。

解析力学で話題となる、\dfrac{d}{dt} f(q(t),\dot{q}(t)) の話。z=f(q,y) の曲線 y(t)=\dot{q}(t) に沿う微分だと考えれば難しくないけど、結構混乱する人が多い、って前も書いたな。

(例えば x=\cos t のときは曲線 (\cos t,\sin t) 上で f(\cos t,\sin t)微分を考えていることになる,と考えれば難しくもない話だと思う.)

解析力学でラグランジアンを微分する時の、「qとqドットを独立とみてもいいのか」問題 - 球面倶楽部 零八式 mark II

大学1年生のときの解析力学の単位は落としたけど
L-q\dot{q} 空間の \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}}\right)=\dfrac{\partial L}{\partial q} における切り口が物理として実現できる世界、という意味だと思っていた。

には「曲線に沿う微分」とまでは書いてなかった.「曲線に沿う微分」の方が格好良いな.今度からこっちを使おう.
なので例についても,

x^x微分するには f(s,t)=s^t の直線 (s,t)=(x,x) に沿う微分を考えれば良い.

すると
\dfrac{df}{dx} = ts^{t-1}\dfrac{ds}{dx}+(\log s)s^t\dfrac{dt}{dx} x^{x}+(\log x)x^x
となり,
(x^x)'=x^{x}+(\log x)x^x
が得られる.

積の微分法も f(s,t)=st の曲線 (s,t)=(f(x),g(x)) に沿う微分を考えれば
\dfrac{df}{dx} = t\dfrac{ds}{dx}+s\dfrac{dt}{dx} =f'(x)g(x)+f(x)g'(x)
で得られる.

z=f(q,r) の全微分
dz=\dfrac{\partial f}{\partial q}dq+\dfrac{\partial f}{\partial r}dr
から
\dfrac{dz}{dt}=\dfrac{\partial f}{\partial q}\dfrac{dq}{dt}+\dfrac{\partial f}{\partial r}\dfrac{dr}{dt}
となり,曲線 r(t)=\dot{q}(t) に沿う微分を考えれば
\dot{z}=\dfrac{\partial f}{\partial q}\dot{q}+\dfrac{\partial f}{\partial \dot{q}}\ddot{q}
となる.

「qとqドットを独立とみて微分してもいいのか」

という問自体がナンセンスだと感じて欲しい所だ.曲線に沿う微分(一種の方向微分)を普通にやっているだけ.だから「qとqドットを独立とみてはいない」し「qとqドットを独立とみて微分してもいない」のである.p=\dot{q} という曲線に沿う微分(この曲線上を動く点の速度ベクトルの計算)を行っているだけなのである.

だけど、解析力学の本などで曲線に沿う微分をやっているだけというような話をしている本て見た記憶がない.渡辺悠樹さんの解析力学講義ノートでも「偏微分の結果に代入するんだと理解してください」と述べるに留まっている.普通の偏微分の断面(曲線に沿う微分)を考えているだけの話だというのはもう少し強調して良いんじゃないだろうか.

2024.05.05追記
曲線自体は例えば q(t)=t^3 とすると (q,\dot{q})=(t^3,3t^2) のようなパラメータ表示された曲線が決まる訳だが,先に曲線の全体像が決まるというよりも微分方程式の1つの解としての曲線が初期条件と
\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}}\right)=\dfrac{\partial L}{\partial q}
によって定まる(初期条件と漸化式によって数列が次々に定まっていく、もしくは木の葉が川を流れていくイメージで運動が定まっていく感じ)と考えた方がわかり易いかも。