三角柱の切り口に正三角形があること

雑誌大学への数学1985年4月号の宿題

「空間に固定された3角形Tがある。Tがどのような形状の3角形であっても、 適当な平面に正射影することによって正3角形にできること、逆に Tが正3角形のとき、適当な平面に正射影することによってどのような 形状の3角形にもできることを証明せよ。」

と同じ問題。雑誌に記載されたレポートは、

「空間に固定された3角形Tがある。Tがどのような形状の3角形であっても、 適当な平面に正射影することによってどのような形状の3角形にもできること」

を証明していた。

Tの3辺の長さを a,b,ca\geqq b\geqq c)とする.これを適当な正射影で d:e:f0 \lt d\leqq e\leqq f)の3角形にできることを示せば良 い。

{\rm OA}=dx{\rm OB}=ex{\rm AB}=fx なる3角形を底面とする三角柱を考える.
{\rm P}{\rm A}の上方 y+z{\rm Q}{\rm B}の上方 y の位置にとったときに,
{\rm OP}=a{\rm OQ}=b{\rm PQ}=c となっているような{\rm O,A,B,P,Q} が存在するかという問題になる.

そのためには,
a^2=(dx)^2+(y+z)^2b^2=(ex)^2+y^2c^2=(fx)^2+z^2
なるx\gt0y\geqq0z\geqq0の存在を示せばよい.

そしてそれは,
f(x)=a^2-(dx)^2-\{\sqrt{b^2-(ex)^2}+\sqrt{c^2-(fx)^2}\}^2=0
をみたす実数 x0\lt x\leqq\dfrac{c}{f}\leqq\dfrac{b}{e})が存在することと同値.

この範囲でf(x)は連続で f(0)=a^2-(b+c)^2\lt 0(3角形の成立条件),
f\Bigl(\dfrac{c}{f}\Bigr)=(a^2-b^2)+\dfrac{c^2}{f^2}(e^2-d^2)\geqq 0
だから,中間値の定理により,f(x)=0をみたすx0\lt x\leqq\dfrac{c}{f}\leqq\dfrac{b}{e})が存在する.

ちなみに,正射影は一方方向の縮小という1次変換を行なったと考えることができるので,次のように示すこともできる.


(a) 任意の三角形を重心が原点Oとなるように平行移動したものを△ABCとする.
(b) A,Bを (1,0),\Bigl(-\dfrac{1}{2},\dfrac{\sqrt{3}}{2}\Bigr)に移す線型変換 f で△ABCは正三角形にうつる.
(c)その正三角形の外接円を f^{-1} で移すとその円は△ABCに外接する楕円になる.
(d)この楕円の長軸を縮小して短軸と同じ長さにすれば,△ABCを一方方向に縮小して正三角形が得られる.


三角柱の切り口に正三角形があることを示す問題が、2010年お茶の水大学に出題されているそうな。