負の二項係数の覚え書き

任意の整数 n と非負整数 r について {}_n\mbox{P}_r を次のように定義する。
{}_n\mbox{P}_r=\left\{\begin{array}{ll} n(n-1)\cdots (n-r+1) & (r\in\mathbb{N}) \\ 1 & (r=0)\end{array}\right.

任意の自然数 n,r について {}_n\mbox{C}_r を次のように定義する。
{}_n\mbox{C}_r=\left\{\begin{array}{ll} \dfrac{{}_n\mbox{P}_r}{r!} & (r\in\mathbb{N}\cup\{0\}) \\ 0 & (r\lt 0)\end{array}\right.

このとき,普通の本には、
「負の整数nと非負整数rについて」
{}_n\mbox{C}_r=(-1)^r {}_{(r-1)-n}\mbox{C}_r
が成り立つとしているが、実はこの式は任意の整数 n,r について成り立つ。n(r-1)-nr-1 を軸に対称な位置にあるので、この変換は対合となるので、あたり前といえばあたり前なのだが、このことを明確に述べている本はあまりないように思う。ちなみに r\lt 0 のときは両辺0で等しい。

例えば、{}_{-3}\mbox{C}_5=(-1)^5{}_{7}\mbox{C}_5=-21 のような計算だけでなく、{}_{5}\mbox{C}_6=(-1)^6{}_{0}\mbox{C}_6=0 のような計算も行うことができる。

良くある {}_n\mbox{C}_r={}_n\mbox{C}_{n-r} は左側固定の変換公式だが、{}_n\mbox{C}_r=(-1)^r {}_{(r-1)-n}\mbox{C}_r は右側固定の変換公式という訳だ。

なお、左側固定の変換公式
{}_n\mbox{C}_r={}_n\mbox{C}_{n-r}
n が非負整数のときのみ成立し,n が負整数のときは成立しない。というのも、n が負で r が正のとき、左辺は0でないが右辺は0になってしまうからである。